冬が一歩一歩、近づいてきている。苦手な冬だが、季節としてはとても美しい。近くの神社の湧き水があるスポットに、朝の散歩に出かけることを日課にしているが、冬の朝、まだ月が残るころの朝は、とても美しい。澄んだ空気や、引き締まる冷気。湧き水の音もこの軽い空気の中で聴くのが好きだ。時々は、そばにある大樹に耳を当てて、木が呼吸する音を聴こうとしてみる。こんな時は、何も考えない、ことを目的にする。このまま、長い時間を過ごせたら、どんなに嬉しいことだろう。そこから帰り道になって、ついついいろいろな現実のことを考え始める。答えのでない現実を楽しむことにしよう、と自分を励ましながら。毎日、同じなのだから、少しは進歩したらいいのにねえ。
写真は、ダッカの仕事場に積まれたカディ綿。私がダッカに行く頃に合わせて、コミラのキティッシュさんから届いている。この白い綿から、染めて、模様をつけて・・・など、など・・・いろいろな作業を進めていくのだけれど、その一連のプロセスは興味深いものである。どの職人さんのところに行っても、布のできる過程・・・しかも、機械化される前の過程がわかり、とても楽しい時を過ごす。このカディに出会った時、こちらも虜になったけれど、これを織っている村のリーダー、キティッシュさんも、夢中になった。彼はバングラデシュの独立時のどさくさの頃に子ども時代を送り、教育の機会を得ることができなかった。ここにきて、社会がインターネットで動くようになると、もうお手上げなのだ。「日本でカディを売ってもらおう!」しかし、こちらもビジネスの初歩さえ無知な日本人であった。彼はもっと仕事がほしい。そんなことを言っているうちに、彼の村からは機が一台、2台・・・と消えて行った。村で織っていたカディは、今ではキティッシュさんがサクラモヒラのカディを織るだけになった。彼は不満を募らせるが、他の選択ができないステイタスだ。しかし、このカディは快適だと思う。これがきっかけになり、布のこと、歴史のことなど、いろいろな本を読んだ。そして東インド会社にまつわる、綿、絹、藍、紅茶、スパイスなど、自分の勉強を兼ねて、第4火曜日の午後からのお話会をGallery Sakura Mohilaで続けてきたが、いつしか3年が過ぎた。参加者の方が詳しいこともある。そんなふうにして、今月のお話会が、また巡ってくる。11月26日(火)、2時から。今月のテーマは、「インドネシアのバティック」・・・歴史や工房のあれこれなどをお話します。バングラデシュの紅茶とお菓子があります。参加費は1000です。Gallery Sakura Mohilaにて。